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【コロナ禍の教育現場】子どもと教員のメンタルケアを放置するな

第37回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■心の健康問題は誰が解決すべきなのか

 また、新型コロナ禍のなかでDV(家庭内暴力)が増えているという教員の話も聞いた。親のストレスが暴力という形で子どもに向けられているのだ。当然それは子どものストレスとなり、騒ぎをひきおこす行動や、異常な甘えや不安、そして子ども同士のトラブルの多発につながっている。

 親のストレスだけが影響しているわけではない。松久教授の調査結果では、「学校行事も次々に中止になり、子どもたちは休校中のモヤモヤを発散させる場所を失っている」という中学校教員の声もあった。「学習の遅れを取り戻そうと取り組んでいるが、そうなると授業進度が早くなり、生徒の理解度が追いついていない」と答えている中学校教員もいる。

 新型コロナ感染に対しては、子どもたちもかなり神経質になっている。「暑くなってきたためか、マスクの着用は子どもにとって大きなストレスのようだ」と松久教授の調査に答えている小学校教員もいる。
 しかし、マスクを外したり、あごマスクにしている子を見たら、教員は注意しないわけにはいかない。それは教員にとっても子どもたちにとってもストレスでしかない。
 子どもたちはストレスに、まさに、まみれている。彼らの「心の健康」を保つには、かなり危険な状況となってきているのだ。

 では、その子どもたちの心のケアは誰の役割なのか。

 押し付けられるのは、教員である。しかし、忙しい教員の生活は、コロナ禍でいっそう多忙になってしまった。それにも関わらず、深刻さを増す「心の健康」にも気を配らなければならないのだが…充分に配慮する余裕などはなく、それを求めるのは無理難題でしかない。

放課後は消毒や会議、さらにトイレ掃除と、ゆっくり子どもと話をする時間がとれない」
 ある小学校教員がそう嘆いていた。子どもの心の健康に気を配りたくても、そのための時間が捻出できないのだ。やりたくてもやれない、それがまた教員のプレッシャーとなり、大きなストレスになっていく。

 子どもたちだけではなく、教員の「心の健康」も危機的状況なのだ。松久教授の調査に、ある中学教員がこんな話をしている。

「体調不良を訴える教員が、最近、特に増えてきています。一人の教員が倒れると、その教員の仕事をほかの教員がカバーするしかなく、その教員の仕事がさらに増えることで体調を壊してしまう。まるでドミノ倒しのようです」

 学校現場における「心の健康問題」を解決していかなければ、重大な問題につながっていく可能性が高い。「学びの保障」も大事かもしれないが、それ以上に、子どもたちと教員の「心の健康」に対する対策が必要になってきている。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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